■あらすじ:
フェリシアは「精霊の愛し子」として、「生涯にたったひとつだけ、愛した人の願いごとを叶えられる力」を持つ。
その力を知る侯爵家に連れ戻されそうになった彼女は、店の前に行き倒れていたアルに「結婚してほしい」と頼み込む。
優しく穏やかなアルを夫として迎え、愛し愛される日々を過ごす。
だが彼は、左目に「服従の呪い」を受け、苦しんでいた。
「アルの苦しみを取り除いてあげたい」と、フェリシアが力を振るった結果、呪い返しのため、皇帝をはじめとする高位貴族らが相次いで亡くなる。
アルの正体は、皇弟・アルフレッド。皇帝に子がないいま、その座を継ぐ者だった。
能力を使い果たしたフェリシアは離婚を切り出すも、皇帝になった夫は「絶対に別れない」と言う。
能力目当てで自分に近づいたはずの夫の執着にとまどうフェリシアだったが……。

■登場人物
・フェリシア(愛称:フェリ)
「精霊の愛し子」だと一目でわかる、黒目黒髪の色彩を持つ。
その外見が目立たない帝国の国境付近の街へ、母子ともども流れてきた。
(街には、東の国から出稼ぎにやってきた黒目黒髪の娼婦が多い)
亡くなった母の跡を継ぎ、焼き菓子屋を営んでいる。
母は、「精霊の愛し子」の伝承を妄信した侯爵家当主に囚われ、性行為を強要されるうち、フェリシアを身籠った。
いつか自分の正体がバレて、母と同じような目に遭うかもしれないと、ずっと恐れていた。
侯爵家に連れ戻される前にと、勢いでアルに結婚を申し込む。

・アルフレッド(愛称:アル)
皇帝の弟で、金色の瞳に、金髪の美青年。(潜入の際には、髪を茶色に染めて、前髪を伸ばしている)
兄から「服従の呪い」を受け、皇家のために働く諜報員として、飼い殺しの扱いを受けていた。
最初こそ解呪のためフェリシアに近づいたが、やがて彼女を心の底から愛するようになる。
帝位についたのも、「フェリシアを保護するためには、権力を手にするしかない」と考えたため。
だが、愛した妻から離婚を切り出されて激しく動揺する。
毎晩「絶対に別れない」と激しく抱いて愛を伝えるが、フェリシアには「能力目当てだ」と思われて、信じてもらえない。

デザイン:FLOSHIKI DESIGN