彼女たちの流儀
彼女たちの流儀に翻弄され、二十日間の恋劇が開幕する。 主人公をとりまく蠱惑的な少女たち。 大人の女ではなく、子供でもない彼女たちは、それぞれの流儀で主人公との恋に立ち会います。 未経験ゆえの衝動的で不器用なやり方― 気持ちよりも先に身体を求める彼女たちに、とまどい、惹かれ、魅了されて行く主人公。 傷つきやすい少女達が持つ独特の倒錯感は時に切なく、いやらしく― 文化祭までの二十日間を演劇部という舞台で送る青春群像。 それは少女達の織り成す繊細な恋の物語。 ■ストーリー 主人公、兎月胡太郎はすましていれば深窓のお嬢様で通るような可憐な美少年。 両親の離婚以来、家を出た母と2人で暮らしてきたが、母の急死によって実家に帰る事になった。 元は華族だという、地方の旧家。 5年振りにその敷居をまたいだ胡太郎は、母といる間一度たりと会う事を許されなかった 双子の姉たち、鳥羽莉と朱音に再会した。 2人は5年も経つにしては驚くほど変わらぬ姿であったが、 かつては感じ得なかった妖精めいた美しさに溢れていた。 再会を喜ぼうとした胡太郎だったが、下の姉・鳥羽莉(とばり)の態度はあまりに冷たかった。 それから半年。 姉たちの通う学園に転校した胡太郎は、それなりに新しい学園生活を満喫していた。 クラスメイトになった幼馴染の少女や変わった友人、病欠で留年しているもうひとりの姉・朱音。 騒がしくも愉快な学生生活は、あわただしくも過ぎて行く。 しかし、鳥羽莉だけは胡太郎に笑顔を見せなかった。 いつも一緒に遊んでいた、幼いころの鳥羽莉――優等生として慕われている学園とは違い、 屋敷の中では淡々と振舞う姉は、どことなく嫌いだった父に少し似ていた。つまり、苦手だった。 初めは打ち解けようとした胡太郎だったが、つれなくあしらわれて挫折した。 もう、姉が自分を見てくれる事はないのだと思っていた。 ――その夜までは。