薫 沈む剣 権力の影に堕ちた道場主

幕末の剣士たちが姿を消し、時代は静かに流れていた。
街の再開発が進む中、剣の道を守り続けてきた神谷道場にも、時代の波が押し寄せる――。

新市長によって課せられた突然の税制改革。
「このままでは道場を畳むことになる」
そう悟った薫の前に現れたのは、街の再建を名目に権力を握る男。
その要求は、書面ではなく‘薫自身’に向けられていた。

誇りと現実の狭間で揺れる彼女が選んだのは、誰にも言えない‘秘密の契約’。
冷たい夜の帳の下、薫は道場を守るために、静かに運命へと身を委ねていく――。

本作は、正義と矜持、そして女としての弱さの間で揺れる薫の心理を丁寧に描いた背徳ドラマ。
視線ひとつ、息遣いひとつに詰まる緊張感が、読者の心を離さない。